航訓乗船記【16日目その2】
【No. 20 |更新日: 2024-03-23 23:25:28】
【タグ】: 航訓, 航海当直, 夜航海
16日目、引き続き中ノ瀬に向けて3直体制で進んでいきます。
今日は船橋での航海当直になります。
11時前に起きて昼ごはんを食べて昇橋します。
現在位置は三重県の南側沖2,30マイル程沖
ワッチ中に変針点もなく、神子元島灯台までワンコースで向かっていきます。
船橋での航海当直はこの間も書いた通り①サブワッチ(2名)②操舵③右/左舷計器(レーダー直)④右/左舷ルックアウト⑤リーサイド があります。
今回は、右舷計器当番,操舵,サブワッチをしました。
右舷計器当番はXバンドレーダーを用いて目視できない距離にある船舶を報告していきます。
本船の船橋は海面から16mのところにあり、地平線までの距離d=2.083*√h の公式に当てはめると、8NM強までは見渡せることがわかります。
それより遠くの船(といっても遠すぎたら意味がないので12NMレンジくらいを使用)を報告します。
報告の例としては「方位270、距離11マイルに反航船が1隻います。CPA4ケーブル、TCPA40分です。」などといった感じです。
操舵当番はその名の通り操舵します。
ただし、車とかと違ってハンドルを握っている人ではなくワッチに入っている士官の判断で進む方向や舵角を指示されます。
学校の練習船とは少し変針の手順が違いました。
【弊学の練習船の場合】
Starb'd 5→midship→steady→starb'd steer XXX
(舵角を指示→舵中央→惰性で回頭するのを止める→微調整)
【本船の場合】
Starb'd 3→midship→steady→steady as she goes→starb'd steer XXX
(舵角を指示→舵中央→惰性で回頭するのを止める→現在の針路で定針→微調整)
Steady as she goesとか授業では習ったけど実際にはこう使うんだなと勉強になりました。
最後はサブワッチです。
サブワッチはワッチに入っている士官と一緒に見張りをしたり左右舷ルックアウト、計器直などの取りまとめをします。
今回のワッチはそれなりに陸から離れてはいましたが、周囲にはそれなりに他の船舶がいました。
あとは風が強く、左斜め後方から風が来ていたので横揺れがまあまああり、ダウンしているものも数名…
振り子の要領で高いところにある船橋は振り回されるので特に酔いやすい箇所かもしれません。
一応自分はまだ船酔いを経験したことがないのですが、自分なりにやっている船酔い対策を2つ紹介したいと思います。
1つ目は気合です。「なんだよ、根性論かよ」と言われそうですが、病は気からというように船酔いも「あー自分酔うかもな〰」という気持ちでいるとそっちの方向に持っていかれやすい(当社比)ので『俺は絶対に酔わない!船酔いに強いんだ』と自己暗示しておくといいかと思います。
2つ目はしっかり立たないということです。
どういうことかというと、船が揺れたときにしっかり立っているとダイレクトに揺れが来て振り回されてしまい、少しずつ気分が悪くなってきます。
よく言われることですが、しっかり立つのではなく、足を肩幅に開いて膝をクッションにすると良いです。
運悪く(良く?)4時間のうち一番最初か最後のサブワッチになると引き継ぎをしなければなりません。
引き継ぎは次のように行います。
「サブワッチ当直交代前の引き継ぎを行います。」
『願います』
「チャーティッドコース068のところ、圧流のためジャイロコース071、マグネットコース078
15時45分の船位はコースライン右2ケーブル、次の変針点 神子元島灯台まで71マイルです。
ログリーディング31.2、.2おき31
トータル31
ラスト7.2
OGトータル26.7、.3もらい27
ラスト6.2
風向NorthからNW、風速4かわらず13K'T
天候変わらずb
気圧1.8下がり1019.8
乾球2.2上がり17.0
湿球2.3上がり14.2
海水1.2上がり17.1
視界良好
周囲の状況は左舷1p't 1NMに白色のボンテン(漁具)
左舷正横後1p't 4NMに本船より速い同航船が1隻います。
なにか質問はありますか?」
『ありません。』
「サブワッチ当直交代前の引継ぎを終わります。」
『引継ぎました』
〜交代時〜
「サブワッチ最後の引継ぎを行います。」
『願います』
「ログリーディング.2オーバー31.4、.4おき31、ラスト7.4
OGトータル予想通り26.7、.3もらい27、ラスト6.2
「それではチャーティットコース068、ジャイロコース071、マグネットコース078でお願いします。サブワッチ交代します。」
『交代しました。』
細かい用語について
LogとOGを取るのは、海流の影響で対水速力と対地速力は同じにはならず、その影響がどれほどかを知るためです。
船長にも同様の内容を報告したら、N.N.~16直終わり!
晩御飯タイムです。
今日は酢豚とチャプチェでした!
夜航海ということもあってか量が多い
まだまだ続きます。
ご飯を食べて寝て23時前に起きます。
場所は静岡県の金魚の尻尾の南の方
夜食のUFOを食べながら当直に備えます。
焼きそば美味い
30分前から片目を瞑って暗さになれます。
暗順応ってやつですね
片目を瞑るのが面倒くさい人は、メガネをかけているならハンカチを挟んでおくと同じ効果を得られます。
昔の海賊とか眼帯をつけてるイメージありますよね。
あれは目をケガしている訳ではなく、当時の船の中は照明がなく暗かったので暗順応のために着けていたらしいです。
20分前になったら右舷側から船橋に上がって行きます。
閉じていた目を開けると…見える…見えるぞ…!(某大佐並感)
お昼の時より陸に近づいたこともあり、船が多かったです。
神子元島灯台で変身してから次の伊豆大島灯台までは東京湾を出入する船が多数います。
周囲の状況のAISを確認するとNavigation statusが"Not Under Command"(運転不自由船)になっている船がちらほら…
運転不自由船とは?
故障その他の異常な事態が生じているため他の船舶の進路を避けることができない船舶
え、あの船壊れてるの??
もしかしたらそれもあるかもしれないけど
大体は入港時間まで時間調整のため漂泊(エンジンを使わずただただ浮いているだけ)をしているそうです。
これがもし"Under Way Using Engine"(機走中)だったら…
スピード出てないのに何をしているんだと、海保の航空機が飛んでくるそうです。
特に外国船籍の船だと、無害通航権の兼ね合いで日本の船会社の船でも警告されるそうです。
AISのNavigation statusに"drifting"追加されたらいいのになぁ…
ちなみにこの漂泊の航法というのも結構曖昧で、灯火も錨泊時の灯火のものもあれば、加えて運転不自由船(紅色全周灯2個縦に連掲)しているものもあったり…
位置や姿勢調整のために対水速力が出てても航行中の灯火つけてなかったり…
目視やレーダーでの見張りが大事になってきます。
他にも注意すべきものがあります。
漁船です。
この伊豆大島近辺では漁船が夜出てきて漁業をしています。
漁船は急に動き出したり止まったりするので、ジャイロコンパスでベアリングを取って衝突の有無を判断します。
ベアリングが船首側か船尾側に変わって行けばいいですが、ずっと同じであれば衝突の危険ありとして避航します。
ただし、ベアリングを取ろうにも相手は小さい船なので航海灯も小さく見にくいことが多いです。
島の街明かりに紛れ込んでいて士官に教えてもらうまで全くわかりませんでした。「え、あれ船なの!?」って感じ。
目視以外にもレーダーARPA(自動衝突予防援助装置)を使って、見つけた漁船をプロットしておきます。
プロットするには映像をダブルクリックします。(機種によって多少違うけど)
このときは、島の近くだったので船をプロッティングしても少ししたら島に対象が移り変わってたり…
これが海技士に出てくる「物標の乗り移り」ってやつです。
反射が弱い映像(漁船)の近くに強い映像(島)があると、船をトラッキングしていても信号が強い方に追尾が乗り移ってしまうあれです
他にも、本船8K'Tという遅い速度で走っているので追い越し船が多く、コンテナ船に追越される時にはレーダーの多重反射も見ることができました。
見えても映像が小さかったり、弱かったりするのかなと勝手に思ってましたが、本当にハッキリ映っていて何も知らないと奥にもう一隻いると誤解しそうでした。
実習でこういうのが体験できると本当に楽しいです
そうこうしているうちに、伊豆大島の東側まで到達。伊豆大島灯台の変針点までやってきました。
ゆっくり走っているので、右転したくてもしにくいという事態が次直交代間際に発生しました。
なにはともあれ4時間の当直終わり!
入直当初はよく周りの船の灯火がわからなかったけど終わる頃には結構見えるようになってきて楽しかった。
下に降りて友達にもらったレトルトカレーを温め、餅を焼き食べました。
カレーと餅、食べれないことはないけどそこまで美味いかと言われると微妙。
海技短大の人たちが下船するときに切り餅袋ごと貰ったので全部焼いてみんなで食べました。短大の人達に感謝。
今日は船橋での航海当直になります。
11時前に起きて昼ごはんを食べて昇橋します。
現在位置は三重県の南側沖2,30マイル程沖
ワッチ中に変針点もなく、神子元島灯台までワンコースで向かっていきます。
船橋での航海当直はこの間も書いた通り①サブワッチ(2名)②操舵③右/左舷計器(レーダー直)④右/左舷ルックアウト⑤リーサイド があります。
今回は、右舷計器当番,操舵,サブワッチをしました。
右舷計器当番はXバンドレーダーを用いて目視できない距離にある船舶を報告していきます。
本船の船橋は海面から16mのところにあり、地平線までの距離d=2.083*√h の公式に当てはめると、8NM強までは見渡せることがわかります。
それより遠くの船(といっても遠すぎたら意味がないので12NMレンジくらいを使用)を報告します。
報告の例としては「方位270、距離11マイルに反航船が1隻います。CPA4ケーブル、TCPA40分です。」などといった感じです。
操舵当番はその名の通り操舵します。
ただし、車とかと違ってハンドルを握っている人ではなくワッチに入っている士官の判断で進む方向や舵角を指示されます。
学校の練習船とは少し変針の手順が違いました。
【弊学の練習船の場合】
Starb'd 5→midship→steady→starb'd steer XXX
(舵角を指示→舵中央→惰性で回頭するのを止める→微調整)
【本船の場合】
Starb'd 3→midship→steady→steady as she goes→starb'd steer XXX
(舵角を指示→舵中央→惰性で回頭するのを止める→現在の針路で定針→微調整)
Steady as she goesとか授業では習ったけど実際にはこう使うんだなと勉強になりました。
最後はサブワッチです。
サブワッチはワッチに入っている士官と一緒に見張りをしたり左右舷ルックアウト、計器直などの取りまとめをします。
今回のワッチはそれなりに陸から離れてはいましたが、周囲にはそれなりに他の船舶がいました。
あとは風が強く、左斜め後方から風が来ていたので横揺れがまあまああり、ダウンしているものも数名…
振り子の要領で高いところにある船橋は振り回されるので特に酔いやすい箇所かもしれません。
一応自分はまだ船酔いを経験したことがないのですが、自分なりにやっている船酔い対策を2つ紹介したいと思います。
1つ目は気合です。「なんだよ、根性論かよ」と言われそうですが、病は気からというように船酔いも「あー自分酔うかもな〰」という気持ちでいるとそっちの方向に持っていかれやすい(当社比)ので『俺は絶対に酔わない!船酔いに強いんだ』と自己暗示しておくといいかと思います。
2つ目はしっかり立たないということです。
どういうことかというと、船が揺れたときにしっかり立っているとダイレクトに揺れが来て振り回されてしまい、少しずつ気分が悪くなってきます。
よく言われることですが、しっかり立つのではなく、足を肩幅に開いて膝をクッションにすると良いです。
運悪く(良く?)4時間のうち一番最初か最後のサブワッチになると引き継ぎをしなければなりません。
引き継ぎは次のように行います。
「サブワッチ当直交代前の引き継ぎを行います。」
『願います』
「チャーティッドコース068のところ、圧流のためジャイロコース071、マグネットコース078
15時45分の船位はコースライン右2ケーブル、次の変針点 神子元島灯台まで71マイルです。
ログリーディング31.2、.2おき31
トータル31
ラスト7.2
OGトータル26.7、.3もらい27
ラスト6.2
風向NorthからNW、風速4かわらず13K'T
天候変わらずb
気圧1.8下がり1019.8
乾球2.2上がり17.0
湿球2.3上がり14.2
海水1.2上がり17.1
視界良好
周囲の状況は左舷1p't 1NMに白色のボンテン(漁具)
左舷正横後1p't 4NMに本船より速い同航船が1隻います。
なにか質問はありますか?」
『ありません。』
「サブワッチ当直交代前の引継ぎを終わります。」
『引継ぎました』
〜交代時〜
「サブワッチ最後の引継ぎを行います。」
『願います』
「ログリーディング.2オーバー31.4、.4おき31、ラスト7.4
OGトータル予想通り26.7、.3もらい27、ラスト6.2
「それではチャーティットコース068、ジャイロコース071、マグネットコース078でお願いします。サブワッチ交代します。」
『交代しました。』
細かい用語について
チャーティッドコース | charted course | 予定針路のこと。海図上に引かれている |
---|---|---|
ログリーディング | Log reading | 当直中に対水で何マイル進んだか 今回は航海速力8K'Tで4時間走っているので、だいたい32くらい |
ログトータル | Log total | N.N.から対水で何マイル進んだか |
OGトータル | OG Total | N.N.から対地で何マイル進んだか |
○p't | ポイント | 1p't=11.25° 大体こぶし1個分 |
LogとOGを取るのは、海流の影響で対水速力と対地速力は同じにはならず、その影響がどれほどかを知るためです。
船長にも同様の内容を報告したら、N.N.~16直終わり!
晩御飯タイムです。
今日は酢豚とチャプチェでした!
夜航海ということもあってか量が多い
まだまだ続きます。
ご飯を食べて寝て23時前に起きます。
場所は静岡県の金魚の尻尾の南の方
夜食のUFOを食べながら当直に備えます。
焼きそば美味い
30分前から片目を瞑って暗さになれます。
暗順応ってやつですね
片目を瞑るのが面倒くさい人は、メガネをかけているならハンカチを挟んでおくと同じ効果を得られます。
昔の海賊とか眼帯をつけてるイメージありますよね。
あれは目をケガしている訳ではなく、当時の船の中は照明がなく暗かったので暗順応のために着けていたらしいです。
20分前になったら右舷側から船橋に上がって行きます。
閉じていた目を開けると…見える…見えるぞ…!(某大佐並感)
お昼の時より陸に近づいたこともあり、船が多かったです。
神子元島灯台で変身してから次の伊豆大島灯台までは東京湾を出入する船が多数います。
周囲の状況のAISを確認するとNavigation statusが"Not Under Command"(運転不自由船)になっている船がちらほら…
運転不自由船とは?
故障その他の異常な事態が生じているため他の船舶の進路を避けることができない船舶
え、あの船壊れてるの??
もしかしたらそれもあるかもしれないけど
大体は入港時間まで時間調整のため漂泊(エンジンを使わずただただ浮いているだけ)をしているそうです。
これがもし"Under Way Using Engine"(機走中)だったら…
スピード出てないのに何をしているんだと、海保の航空機が飛んでくるそうです。
特に外国船籍の船だと、無害通航権の兼ね合いで日本の船会社の船でも警告されるそうです。
AISのNavigation statusに"drifting"追加されたらいいのになぁ…
ちなみにこの漂泊の航法というのも結構曖昧で、灯火も錨泊時の灯火のものもあれば、加えて運転不自由船(紅色全周灯2個縦に連掲)しているものもあったり…
位置や姿勢調整のために対水速力が出てても航行中の灯火つけてなかったり…
目視やレーダーでの見張りが大事になってきます。
他にも注意すべきものがあります。
漁船です。
この伊豆大島近辺では漁船が夜出てきて漁業をしています。
漁船は急に動き出したり止まったりするので、ジャイロコンパスでベアリングを取って衝突の有無を判断します。
ベアリングが船首側か船尾側に変わって行けばいいですが、ずっと同じであれば衝突の危険ありとして避航します。
ただし、ベアリングを取ろうにも相手は小さい船なので航海灯も小さく見にくいことが多いです。
島の街明かりに紛れ込んでいて士官に教えてもらうまで全くわかりませんでした。「え、あれ船なの!?」って感じ。
目視以外にもレーダーARPA(自動衝突予防援助装置)を使って、見つけた漁船をプロットしておきます。
プロットするには映像をダブルクリックします。(機種によって多少違うけど)
このときは、島の近くだったので船をプロッティングしても少ししたら島に対象が移り変わってたり…
これが海技士に出てくる「物標の乗り移り」ってやつです。
反射が弱い映像(漁船)の近くに強い映像(島)があると、船をトラッキングしていても信号が強い方に追尾が乗り移ってしまうあれです
他にも、本船8K'Tという遅い速度で走っているので追い越し船が多く、コンテナ船に追越される時にはレーダーの多重反射も見ることができました。
見えても映像が小さかったり、弱かったりするのかなと勝手に思ってましたが、本当にハッキリ映っていて何も知らないと奥にもう一隻いると誤解しそうでした。
実習でこういうのが体験できると本当に楽しいです
そうこうしているうちに、伊豆大島の東側まで到達。伊豆大島灯台の変針点までやってきました。
ゆっくり走っているので、右転したくてもしにくいという事態が次直交代間際に発生しました。
なにはともあれ4時間の当直終わり!
入直当初はよく周りの船の灯火がわからなかったけど終わる頃には結構見えるようになってきて楽しかった。
下に降りて友達にもらったレトルトカレーを温め、餅を焼き食べました。
カレーと餅、食べれないことはないけどそこまで美味いかと言われると微妙。
海技短大の人たちが下船するときに切り餅袋ごと貰ったので全部焼いてみんなで食べました。短大の人達に感謝。