こちら船橋 実習生【遠航(往路)編】
【No. 37 |更新日: 2025-06-24 10:40:00】
【タグ】: 航訓, 帆船, 遠洋航海
こちら船橋 実習生【遠航(往路)編】
みなさんお久しぶりです。
6月ですね。下船してから実に4ヶ月も経ってしまいました。
就活が忙しかったのです。(言い訳)
紆余曲折ありましたが、きちんと行き先も決まったので一安心。
就職活動がどんな感じかは後輩達も気になるところだと思うので、また別途ブログにまとめる予定です。
今回はシンガポール向け航海について紹介したいと思います。

1ヶ月弱ぶりの神戸港。
港までは家族が車で送ってくれました。
岸壁には総員上陸時にいた海王丸に加えて、少し遠いPI-U岸壁にも青雲丸が係留されていました。
19時25分の帰船者点検が近づくにつれ「船に"帰る"時間は大丈夫か」と家族からしきりに訊かれました。時間自体は大丈夫なのですが、あくまでも帰る家は実家なので、「船に帰る」というのにはどこか違和感を感じる筆者でした。
仮バース等で上陸するのであれば船に帰るけど、家から船に帰るのは違うなという感覚。船乗りならわかってくれる(はず)
まあそれはさておき、無事に乗船。
予定通り、帰船者点検(←ん?)を受けました。
久しぶりに友達に会えて気分が上がります。
明日からの実習に備えて早く寝ることにします。

スカッツルから望む神戸の夜景
久しぶりの船内生活に適応できてしまっている自分が怖い。
今日は神戸消防の出初式らしく、対岸のメリケンパークには消防車と救急車が集結していました。
巡検後、富山高専のOB方からいただいたドーナツを呼ばれました。おいしかった。
午前中には本船の航行区域を内航→外航に変更する「外変」の手続きがあり、神戸税関の監視下に入りました。
準備ではボンド品の積み込みを行います。
外航資格になると、船内は税制上 日本国外の扱いになり、日本に帰国するまでの間に消費するもの(食料、ジュースなどの飲料、酒、タバコなどなど)には税金がかからなくなります。
これら船内で消費する免税品のことを「ボンド品」と呼んでいます。
購入の手続は個人ではできないので、年末の総員上陸までに事務部を通じて注文する必要があります。
日本円からシンガポールドルへの両替の受付も年末のこのタイミングでされます。
参考までに、5,000円→42 S$、10,000円→84 S$となり、1 S$あたり119.0円
2025年1月現在 1 S$=115円と考えると手数料は3%程度といったところでしょうか。
さて、準備を続ける間にも岸壁には続々とお見送りの方々が集まってきます。

【P旗を掲げる本船】
※P旗:「本船はまもなく出港する。総員帰船されたい」の意
実習生でも、事前に届け出を出しておけばデッキ上まで見送りに来て貰うことができ、なくても自分が岸壁に降りることで面会することができました。
自分も出港前に日本の地を踏んでおきたかったので、先輩に来てもらい束の間の陸を楽しみました。(駆けつけてくださったU先輩ありがとうございました)
お昼ご飯を食べると、いよいよ出航式です。
あいにくの雨により、フード前ではなく第一教室になりました。
機構の理事長や神戸の行政の方など、様々な方面から激励の言葉をいただき、我々実習生に対する期待が伝わました。同時に、この遠洋航海でたくさんのことを学び将来の日本を海運を支えるという使命感も覚えました。
出港式が終わればすぐにスタンバイです。
今回は中部配置でしたが、主機試運転は午前中に済ませていたため、舷梯の片付けが主な作業です。
オールラインレッコ後、ある程度 岸壁から離れると「登舷礼、用意」のマイクがかかりました。
本来、帆船では登檣礼といいヤードに登って「ごーきげーんよーう!」というやつ(大雑把な説明)をするのが しきたりです。
が、我々 商船高専実習生は諸般の都合により登檣訓練を行っていないため、舷側に整列し直立不動の姿勢で立つ(士官のみ敬礼)ことで、見送りに来てくださった方々に敬意を表します。
登舷礼が終われば、帽振れのマイク。
雨の中大勢の方が手を振ってくださり、中には「ごーきげーんよーう!」と陸から言ってくださる方も。こちらからも士官の音頭に合わせ「ごーぎげーんよーう!」と答礼しました。
ヘルメットを振るたびに、プラスチックの留め具がカラカラと鳴り、どことなく寂しさを感じます。
今からシンガポールに向けて遠洋航海するんだと思うとどこか感慨深く、少し涙ぐみそうにもなりました。
防波堤を越えれば、パイロットキャプテンが下船し部署開け。
密航者がいないかを点検後居室に戻ります。
晩御飯はカレーでした。

安定のクォリティー。うまい。
食後には停泊中に張った水で、最後の清水風呂を楽しみました。
この日は船内保安部署操練がありました。
というのも、これから向かうシンガポール方面には海賊が出没することがあり、特に北緯6度以南では本船でも放水の準備や施錠など対策を行います。
本操練では海賊来襲時に、船内に立て籠もる手順を確認しました。

操練後の夕食はビーフシチューでした。
昨日がカレーだったので、2日連続カレーという噂もありましたが、さすがに違いました。美味しかった。
ちなみに、普段 操練の日の夕食にカレーが出されるの には理由があります。なぜでしょう────
操練により司厨部も忙しく、カレーであれば作り置きできるからみたいです。なるほど。
さて、今日からは節水のため海水入浴が始まりました。
海水入浴には作法があります。
①浴槽の海水で掛け湯をする。
②浴槽に浸かる。
③浴槽から出て体を洗う。
④清水で流す。
石鹸で洗う前に浴槽に浸かることになるので、入浴中海水は出しっぱなしになります。
清水入浴に比べて制限もありますが、清水よりも体が芯まで温まり、浮くこともできるので個人的には楽しいです。
遠洋航海中は2日おきに当直舷(当直班)と非直舷(課業班)を交代します。
練習船の当直舷と非直舷は、6つ班の学生の居室が右舷と左舷に別れていることからきています。(左舷側が偶数班、右舷側が奇数班)
引き継いだ喜界島手前にはボンテン(漁具)が多く、プロペラに巻き込まないように見張りに一層取り組みました。
すると、交代後15分程度で早速 左舷船首に赤色のボンテンを発見。報告ののちC/Oの操船で避航しました。
よく見つけたと褒めてもらえたのがうれしかった。
前回、鳥をボンテンと見間違えたのから成長した! (参照: 航訓乗船記【27-31日目】)
その後は、18-19時のサブワッチをし、トンビ埼を変針しました。
1N海技試験の航海計画で出てくるあのトンビ埼です。
変針点3NM前にはキャプテンに報告しなければならないので、海図上で3NM前に灯台灯火が何°方向に見えるのかを予め確認し、レピータコンパスで随時確認します。
変針点3NM前になればキャプテンに電話をし、昇橋されたら現状報告ののち、変針前の報告をします。
ーーーーー
キャプテン、現状報告をします。
チャーティッドコース、ジャイロコース共に201
マグネットコース○○○°
ログスピード10.1
OGスピード9.8
視界良好、周囲はクリアです。
45分のポジションはコースライン上。
次の変針点トンビ埼灯台灯火まで3NMでした。
続いて変針前の報告を行います。
トンビ埼灯台灯火を312度、7.4マイルに見て222に変針します。
以上です。
ーーーーー
そのまま灯台が312度に見える地点まで来たら
ーーーーー
キャプテン、変針点です。222に変針します。
ーーーーー
無事に変針すれば、ポジションを入れてA/Co レポートを記入し、キャプテン報告をします。
ーーーーー
キャプテン、変針後の報告します。
19時00分、トンビ埼灯台を変針しました。
〇〇分のahead(behind)でした。
ーーーーー
「はーい、さんきゅー」

自分で変針した航跡をみると達成感ありますね。
沖縄南岸は これまた漁具が多いので、プロペラに巻き込まぬよう見張りを頑張ります。
また、1月だというのに暖かく 半袖で過ごせるほどでした。
この先 南下する毎にどんどん気温が増していき、機関室も猛暑になるため、冷房運転が開始されました。
1月に冷房を使うことになるとは…
緯度的に当たり前なのですが、日本に住んでる季節感覚からするとやっぱり不思議な感じがします。
午後の16-20直ではSet Co.を開始しました。
Set Course(セットコース)とは、推測航法のことで設定針路とLog Readingの値でもって自船の位置を推測して航海します。

船位はホワイトチャート(白海図)に記入します。
推測航法では、本船の正確な位置を得る手段として太陽の隔時観測もしくは星測を行います。
しかし、航訓の推測航法は30分ごとに推測位置(△)とGPS位置(◇)を入れて、本船の位置を把握します。
純粋な推測航法ではないので、ちょっとややこしいですね。
また、推測航法にはコースラインがなければ変針点の概念もありません。
よって引き継ぎや報告の際は「10時のポジションは(推測位置より)、5' S'ly, 2' W'lyでした。」のように報告します。
推測航法について ざっと説明しましたが、実は私はこの時間 船橋にはほとんどおらず、「気象当番」をしました。
気象当番とは?
遠洋航海中に編成される役割で、4時間1人でひたすら気象観測をします。
計測内容は、普段のリーサイドの内容に加えて
①波高、周期
②うねりの方向、周期
③雲量、雲底
④雲形(低層雲、中層雲、高層雲)
⑤視程
⑥現在天気、過去天気
が あります。
計測の方法は通信部の方が優しく教えてくださり、慣れれば一人でできます。
観測したデータは、日本時間の0時、3時、9時、12時、15時、18時、21時にインマルサット衛星経由で気象庁宛に送信します。
実際には、通信士が無線室に不在の時間(深夜等)があるため、全ての時間で送信する訳ではありませんが記録用紙にまとめます。
上手くいけば気象庁の地上天気図に観測した情報が採用され、天気予報に活用されます。
気象図に採用されなくても、気象庁のビッグデータに登録され、スーパーコンピュータが計算する際の参考になったりします。
普段 みている天気図も、海の上で船員が計測したデータを参考に作られているんですね。見えないところで頑張っています。
そう考えると、とてもスケールが大きい作業といえるでしょう。
ちなみに私が送信したデータは なんと!!
…採用されませんでした。
まあ、まだ沖縄沖だし…ね。(´・ω・`)
陸から離れてからが本番です。
日本の領海を出たところで、本航海初の時刻改正。
今回の時刻改正では15分時間を巻き戻します。
つまり8-12直以外は休憩時間が15分長くなるということです。15分睡眠時間が増えるのはうれしいですね。
台湾見えない
フィリピン見えない
20-M.N. 無線室当直
この日は初めての太陽観測を行いました。
連日、曇天が続きできなかった太陽観測。
太陽観測とは、太陽の高度を午前と正午でそれぞれ計測し、推測位置からどれだけズレているかを得る方法です。
要は太陽でランニングフィックスをするということですね。


東京湾仮泊中に撮影した太陽観測のイメージ
どうでもいいけど、六分儀使ってる姿ってカッコいいよね。そう思う人コメントください。(コメント乞食)

覗くと…

こんな感じ
午前観測は、笛の合図に合わせて行います。
この3回の計測でそれぞれインターセプト(修正差)を計算し、平均の値を午前のインターセプトとします。
コツとしては、マイクロメーターを回しすぎないことです。
士官からは「地球の自転を感じながらゆっくり」と教えられ、半信半疑で試してみると確かに精度が良くなりました。
みなさんも太陽を測るときには「地球の自転を感じながら」を意識しましょう。
正午観測は、太陽が正中(メリパス)したときの高度を測ります。
太陽がもっとも高く見えてるとき、それすなわち太陽が真南の180度方向にあるということです。
推測位置にいた時に太陽がメリパスする高度と、実際にメリパスした高度の差を取れば、それがそのまま推測位置からの南北偏位となります。
よく考えられていますね。
ちなみに、メリパスの際は笛の合図がありません。
各自、「今がメリパスだ!」と思えばその値を取って帰ります。
よって、集中してずっと六分儀を覗いていると いつの間にかみんな片付けている…なんてことも。
裏技としては士官の近くで計測すると、メリパスが確実に終わったあとに帰ることができます。(せこい)
午後からはワッチ班に戻ります。
N.N.-16直です。
しかし、今日は学友会活動の日です。
学友会とは 船内の同好会みたいなもので、学生、士官、部員 問わず活動します。
今回の遠洋航海では、総務班、節水班、理髪班、記録班、映画班、気象考察班、トレーニング班、漁労班などが編成され、私は無線班でした。
私が考案して立ち上げた学友会班ですが、内容はラジオを受信して遊ぼうというもので、短波や付近の国のFMラジオを聴きました。
入ってくる通信のほとんどが中国語で、正直なにを言っているかはわかりませんが、なんとなく異国感は味わえるので楽しいです。
一応、日本語放送も入りNHKラジオを聞いたり、朝鮮中央放送の日本語放送(←!?)を聞いたりしていました。
活動内容がとてもマニアックなので、自分含め学生メンバーは4人でしたが、なかなか楽しかったです
N.N.-16直
船内成人式
船内成人式とは?
その名の通り、船内で行われる成人式です。
とはいっても、高専4年(=大学1年生)と言えば順当に進級していれば18歳か19歳です。
ここで祝われていたのは、なんらかの理由で1年原級留置になった実習生か、部員(主に司厨部)の方が含まれていました。
地元の同級生に会えない点では、船上成人式は寂しい面はありますが、船の上で成人を迎えるというのも貴重な経験であるので少し羨ましくあります。
ちなみに昨日のN.N.-16直同様に、この日のワッチはなくなりました。
ちょっと悲しい。
午後からは課業班。
船体整備では、汚水処理機の汚泥さらいをしました。
字面だけ見るとえげつない作業をしてそうですが、基本的には外からバルブの操作をするのみです。
浄化槽に水を十分入れ、エアを入れて撹拌、水を引く
上部の蓋を開けて、塩素のタブレットを入れるなどもしました。
匂いはそこまでキツくありませんが、やっぱりします。
あと蒸し暑いです。
この作業をしている裏で、機帆走実施の準備がされていました。
機帆走とは?
主機関を使用しながら帆走することです。
今回は、メインマストのアッパートップとロワートップを展張しました。

機帆走中の日本丸
帆を展張するには、ヤードに登って帆を留めている紐を解く必要がありますが、この作業は甲板部の乗組員方が実施します。
先の回でも書いたように、商船高専の実習生は今現在 登檣訓練を行っていませんが、乗組員方は訓練をしないといけません。
この機帆走は乗組員方の訓練の一環でもあるのです。
実習生が行う作業もありますが、ヤードの昇降くらいです。
感覚としては、普段のブレース引きと救命艇の揚収を足したような感じです。
無線室当直
さて、シンガポール入港が見えてきたところで、悲しい出来事がありました。
浴槽の故障です。
本船のお風呂は、タイル張りの浴槽に張った海水に、ボイラーの蒸気を通すことで沸かしています。
浴室に誰もいない場合は、最後の人が蒸気を止める運用になっていましたが、止め方が分からなかった実習生がそのままにして夕食に行ってしまいました。
結果、浴槽のお湯が煮えたぎり、熱に耐えきれなかったタイルが割れる事態に…
割れたタイル(ガラス)は危険なので、以降入浴は禁止。日本に帰るまでシャワー生活になりました。
まあ、仕方ない…こういうこともある。
強く生きよう。
1月16日
船舶医療
操練
船舶医療では、同乗しているドクターから講義を受けました。
内容は、食中毒や感染症についてでした。
要は上陸中に怪しいもの食うなよという話です。
他にも「医者(外科医)とはどういう仕事なのか」とか、「なぜ医者になったのか」という話も聞きました。
このドクターは往路だけで、復路は別のドクターに引き継ぎです。
帰りは飛行機。うらやましい。
この辺りからです。日本丸の機関部が遂に本気を出し始めました。
2日間の機帆走のおかげで予定より早く進むことができ、船長が1日早くシンガポールに錨泊することを決断しました。
日本丸は普段7〜8K'T程とゆっくり走っていました。が、遂に主軸回転数を210回転とし、OG12K'T。
2ケタ台になるだけでも歓喜だったのに、12K'Tとは船内学生は狂気乱舞でした。
ちなみに、年末の総員上陸中にUWC(Under Water Cleaning)という、船底清掃をしたおかげで去年の航海に比べてログ(スピード)は伸びていました。ダブルでうれしい。
シンガポール沖に到着しました。
目の前にはマリーナベイ・サンズ。
テレビやガイドブックで見ていた光景が実際に目の前にあると、とうとう来た感があって嬉しいです。が、入港は明後日なのでそれまでお預け。
沖に着くと、代理店の方が通船で乗船されました。
オフィサーもメールでやりとりしてただけで、実際にどんな人が来るか分からずドキドキしてました。
(メール友達にエンカウントする気持ちらしい)
外地でみる初の外国人…いや、ここでは自分達が外国人か?と思いながら、「Hello!!」と大きな声で挨拶します。
大きい船が密集して錨泊しており圧を感じます。
ところで、1日仮泊が早まって予定が空いた訳ですが、こういうとき帆船ではなにをするかというと…
そうだね。やし摺りだね。
やしの実を持ってひたすら甲板流し。
気温が高いお陰で海水が気持ちよくて良いのですが、体勢的に腰がやられます。
でもそんなこと気にしてる暇はありません。
わっしょい\ワッショイ/わっしょい\ワッショイ/…
その後は、「SGアライバルカード」を入力します。
「SGアライバルカード」とは、シンガポール入国24時間以内に記入するフォームで、オンライン申請が可能です。
「え?オンライン?通信環境どうすんの」と思ったあなた。
ちゃんと本船でポケットwi-fiが用意されてました。
しかし、接続台数が10台までで、2台のポケットwi-fiを駆使して順番にやっても、同接10人は重たかったです。
事前にsimを買ってる人や、キャリアで海外通信を申し込んでいる人は、そっちを使ったほうが早いです。
この船内wi-fiは、SGアライバルカードを使い終わった後は教室に置かれ、残りの容量を実習生に開放してもらいました。ありがたき幸せ。
仮泊場所から岸壁まですぐだと思っていましたが、セントーサ島を回ってCruise Terminalへ向かい、1時間弱掛かりました。
岸壁に付けば、入国審査です。
上陸の度に手荷物検査や認証が必要ですが、1回目に顔写真を登録しておけば、入国審査官と話すことなく改札を通るだけで出入国できるようになります。(手荷物検査は必要)
方法は、機械にパスポートを差し込み、機械のカメラで顔を撮影します。
このとき、帽子やメガネは外して置く必要があります。
私は帽子を外し忘れてて係の人に注意されましたorz
昼飯を食べて、午後からは上陸です。
上陸時の様子は…次回!!
さて、今回の釣り太郎日記は本人が書いてくれました。
遠洋航海 大物を狙う人は必見です。(たぶん)
ーーーーー
1月4日
仕掛け(バケ)の確認。なお、これが最後の姿となった。
1月8日
昼の整列時、乗組員のSさんからキハダマグロ(80cm)を釣ったと自慢される。
釣れた海域は室戸岬沖
1月9日
20時ごろ、Sさんがマグロの解体ショーを行う。
胃袋には10cmほどのアジが1匹入っていた。
Sさんが事務員さんに話を聞いていたため事務員さんのほうがトローリングに詳しそうだった
1月11日
Sさんが1moverのシイラをあげた。
場所はバシーを抜けたあたりの海域。
また、この日別の学校の人から仕掛けがなくなったといわれた。話を聞くと数日前に夜まで仕掛けており翌日の朝に見に行ったところなくなっていたそうだ。これ以降いくら探しても見つからなかった。
仕掛けは日没までに、また通行制限されたときに都度回収しよう。
1月12日
この日学友会があり、仕掛けを自作した。
仕掛けは針とスナップを作るときの紐を使い作った(プロトタイプver.1.0)。この時担当教官と一緒に作った
1月13日
初めて仕掛けを流した。しかし釣れなかったばかりか紐が絡み原型をとどめていなかった。またオフィサーからトローリングの話を聞き、トローリングの最適な速力は帆走するぐらいで、水深の変化がある所や近くに陸地があるところのほうが釣れやすいらしい
1月14日
この日ぐらいから風が弱まり通行制限が解除された。部員方は釣れていたがこっちは釣れなかった
1月15日
この日甲板上で散歩していた機関部の方から声を掛けられた。
この方も釣りの経験があるらしくビニールひもやお菓子の袋で作ること勧められた。
また、ハワイは釣れるが、オーストラリアのダウ島に行ったときはカツオがかかったのみであまり釣れなかったと教えていただいた。
この日の夕方鳥羽のW君に手伝ってもらい仕掛け(プロトタイプver.2.0)を作った。
この時ビニールひもがなかったのでビニール袋で代用した。また集魚効果のあるヒコーキも付けた
1月16日
ヒコーキを付けたことにより仕掛けが絡むは、Sさんから魚を散らすと小言いわれるはでこの日のうちに外した
1月18日
前日シンガポールに錨泊した。
船の近くに遊漁船がいたため声をかけたかったと後悔した。
ーーーーー
残念ながら、学生部は往路で釣果をあげることができなかったようです。
復路に期待ですね。
みなさんお久しぶりです。
6月ですね。下船してから実に4ヶ月も経ってしまいました。
就活が忙しかったのです。(言い訳)
紆余曲折ありましたが、きちんと行き先も決まったので一安心。
就職活動がどんな感じかは後輩達も気になるところだと思うので、また別途ブログにまとめる予定です。
今回はシンガポール向け航海について紹介したいと思います。
〜もくじ〜
1/4 帰船
1/5 出航準備
1/6 出航
1/7 海水風呂はじまる
1/8 トンビ埼灯台 変針
1/9 気象当番 冷房運転開始
1/10 初の時刻改正
1/11 無線室当直
1/12 太陽観測 学友会
1/13 船内成人式
1/14 機帆走実施
1/15 海水風呂(終)
1/16 日本丸本気の210回転。OG13K'T
1/17 錨地に1日早く到着
1/18 船体整備 SGアライバルカードの記入
1/19 シンガポール入港
【番外編】つり太郎日誌(その3)
1月4日『帰船』@神戸港

1ヶ月弱ぶりの神戸港。
港までは家族が車で送ってくれました。
岸壁には総員上陸時にいた海王丸に加えて、少し遠いPI-U岸壁にも青雲丸が係留されていました。
19時25分の帰船者点検が近づくにつれ「船に"帰る"時間は大丈夫か」と家族からしきりに訊かれました。時間自体は大丈夫なのですが、あくまでも帰る家は実家なので、「船に帰る」というのにはどこか違和感を感じる筆者でした。
仮バース等で上陸するのであれば船に帰るけど、家から船に帰るのは違うなという感覚。船乗りならわかってくれる(はず)
まあそれはさておき、無事に乗船。
予定通り、帰船者点検(←ん?)を受けました。
久しぶりに友達に会えて気分が上がります。
明日からの実習に備えて早く寝ることにします。

スカッツルから望む神戸の夜景
1月5日『出港準備』@神戸港
いつも通りの6時起床。久しぶりの船内生活に適応できてしまっている自分が怖い。
今日は神戸消防の出初式らしく、対岸のメリケンパークには消防車と救急車が集結していました。
これが本当の対岸の火事
巡検後、富山高専のOB方からいただいたドーナツを呼ばれました。おいしかった。
1月6日『出港』@神戸港→四国南岸沖
遂に出港日。午前中には本船の航行区域を内航→外航に変更する「外変」の手続きがあり、神戸税関の監視下に入りました。
準備ではボンド品の積み込みを行います。
外航資格になると、船内は税制上 日本国外の扱いになり、日本に帰国するまでの間に消費するもの(食料、ジュースなどの飲料、酒、タバコなどなど)には税金がかからなくなります。
これら船内で消費する免税品のことを「ボンド品」と呼んでいます。
購入の手続は個人ではできないので、年末の総員上陸までに事務部を通じて注文する必要があります。
日本円からシンガポールドルへの両替の受付も年末のこのタイミングでされます。
参考までに、5,000円→42 S$、10,000円→84 S$となり、1 S$あたり119.0円
2025年1月現在 1 S$=115円と考えると手数料は3%程度といったところでしょうか。
さて、準備を続ける間にも岸壁には続々とお見送りの方々が集まってきます。

【P旗を掲げる本船】
※P旗:「本船はまもなく出港する。総員帰船されたい」の意
実習生でも、事前に届け出を出しておけばデッキ上まで見送りに来て貰うことができ、なくても自分が岸壁に降りることで面会することができました。
自分も出港前に日本の地を踏んでおきたかったので、先輩に来てもらい束の間の陸を楽しみました。(駆けつけてくださったU先輩ありがとうございました)
お昼ご飯を食べると、いよいよ出航式です。
あいにくの雨により、フード前ではなく第一教室になりました。
機構の理事長や神戸の行政の方など、様々な方面から激励の言葉をいただき、我々実習生に対する期待が伝わました。同時に、この遠洋航海でたくさんのことを学び将来の日本を海運を支えるという使命感も覚えました。
出港式が終わればすぐにスタンバイです。
今回は中部配置でしたが、主機試運転は午前中に済ませていたため、舷梯の片付けが主な作業です。
オールラインレッコ後、ある程度 岸壁から離れると「登舷礼、用意」のマイクがかかりました。
本来、帆船では登檣礼といいヤードに登って「ごーきげーんよーう!」というやつ(大雑把な説明)をするのが しきたりです。
が、我々 商船高専実習生は諸般の都合により登檣訓練を行っていないため、舷側に整列し直立不動の姿勢で立つ(士官のみ敬礼)ことで、見送りに来てくださった方々に敬意を表します。
登舷礼が終われば、帽振れのマイク。
雨の中大勢の方が手を振ってくださり、中には「ごーきげーんよーう!」と陸から言ってくださる方も。こちらからも士官の音頭に合わせ「ごーぎげーんよーう!」と答礼しました。
ヘルメットを振るたびに、プラスチックの留め具がカラカラと鳴り、どことなく寂しさを感じます。
今からシンガポールに向けて遠洋航海するんだと思うとどこか感慨深く、少し涙ぐみそうにもなりました。
防波堤を越えれば、パイロットキャプテンが下船し部署開け。
密航者がいないかを点検後居室に戻ります。
晩御飯はカレーでした。

安定のクォリティー。うまい。
食後には停泊中に張った水で、最後の清水風呂を楽しみました。
1月7日『海水風呂はじまる』@四国南岸沖→九州東岸沖
当初の予定では、四国南岸沖から沖縄方面まで直行する予定でしたが、黒潮を避けるために航路変更。九州東岸沖を経由し沖縄まで沿岸航海になりました。この日は船内保安部署操練がありました。
というのも、これから向かうシンガポール方面には海賊が出没することがあり、特に北緯6度以南では本船でも放水の準備や施錠など対策を行います。
本操練では海賊来襲時に、船内に立て籠もる手順を確認しました。

操練後の夕食はビーフシチューでした。
昨日がカレーだったので、2日連続カレーという噂もありましたが、さすがに違いました。美味しかった。
ちなみに、普段 操練の日の夕食にカレーが出されるの には理由があります。なぜでしょう────
操練により司厨部も忙しく、カレーであれば作り置きできるからみたいです。なるほど。
さて、今日からは節水のため海水入浴が始まりました。
海水入浴には作法があります。
①浴槽の海水で掛け湯をする。
②浴槽に浸かる。
③浴槽から出て体を洗う。
④清水で流す。
石鹸で洗う前に浴槽に浸かることになるので、入浴中海水は出しっぱなしになります。
清水入浴に比べて制限もありますが、清水よりも体が芯まで温まり、浮くこともできるので個人的には楽しいです。
1月8日『トンビ埼変針』 @鹿児島南東岸沖→宮古島沖
年明け初の航海当直は16-20直です。遠洋航海中は2日おきに当直舷(当直班)と非直舷(課業班)を交代します。
練習船の当直舷と非直舷は、6つ班の学生の居室が右舷と左舷に別れていることからきています。(左舷側が偶数班、右舷側が奇数班)
引き継いだ喜界島手前にはボンテン(漁具)が多く、プロペラに巻き込まないように見張りに一層取り組みました。
すると、交代後15分程度で早速 左舷船首に赤色のボンテンを発見。報告ののちC/Oの操船で避航しました。
よく見つけたと褒めてもらえたのがうれしかった。
前回、鳥をボンテンと見間違えたのから成長した! (参照: 航訓乗船記【27-31日目】)
その後は、18-19時のサブワッチをし、トンビ埼を変針しました。
1N海技試験の航海計画で出てくるあのトンビ埼です。
変針点3NM前にはキャプテンに報告しなければならないので、海図上で3NM前に灯台灯火が何°方向に見えるのかを予め確認し、レピータコンパスで随時確認します。
変針点3NM前になればキャプテンに電話をし、昇橋されたら現状報告ののち、変針前の報告をします。
ーーーーー
キャプテン、現状報告をします。
チャーティッドコース、ジャイロコース共に201
マグネットコース○○○°
ログスピード10.1
OGスピード9.8
視界良好、周囲はクリアです。
45分のポジションはコースライン上。
次の変針点トンビ埼灯台灯火まで3NMでした。
続いて変針前の報告を行います。
トンビ埼灯台灯火を312度、7.4マイルに見て222に変針します。
以上です。
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そのまま灯台が312度に見える地点まで来たら
ーーーーー
キャプテン、変針点です。222に変針します。
ーーーーー
無事に変針すれば、ポジションを入れてA/Co レポートを記入し、キャプテン報告をします。
ーーーーー
キャプテン、変針後の報告します。
19時00分、トンビ埼灯台を変針しました。
〇〇分のahead(behind)でした。
ーーーーー
「はーい、さんきゅー」

自分で変針した航跡をみると達成感ありますね。
1月9日:気象当番 冷房運転開始 @沖縄沖
引き続き4-8直に入ります。沖縄南岸は これまた漁具が多いので、プロペラに巻き込まぬよう見張りを頑張ります。
また、1月だというのに暖かく 半袖で過ごせるほどでした。
この先 南下する毎にどんどん気温が増していき、機関室も猛暑になるため、冷房運転が開始されました。
1月に冷房を使うことになるとは…
緯度的に当たり前なのですが、日本に住んでる季節感覚からするとやっぱり不思議な感じがします。
午後の16-20直ではSet Co.を開始しました。
Set Course(セットコース)とは、推測航法のことで設定針路とLog Readingの値でもって自船の位置を推測して航海します。

船位はホワイトチャート(白海図)に記入します。
推測航法では、本船の正確な位置を得る手段として太陽の隔時観測もしくは星測を行います。
しかし、航訓の推測航法は30分ごとに推測位置(△)とGPS位置(◇)を入れて、本船の位置を把握します。
純粋な推測航法ではないので、ちょっとややこしいですね。
また、推測航法にはコースラインがなければ変針点の概念もありません。
よって引き継ぎや報告の際は「10時のポジションは(推測位置より)、5' S'ly, 2' W'lyでした。」のように報告します。
偏位方向 | 南北偏位 | 東西偏位 | ||
---|---|---|---|---|
北寄り | 南寄り | 東寄り | 西寄り | |
読み | ノーザリー | サザリー | イースタリー | ウェスタリー |
表記 | N'ly | S'ly | E'ly | W'ly |
偏位無し |
---|
ニル |
nil |
推測航法について ざっと説明しましたが、実は私はこの時間 船橋にはほとんどおらず、「気象当番」をしました。
気象当番とは?
遠洋航海中に編成される役割で、4時間1人でひたすら気象観測をします。
計測内容は、普段のリーサイドの内容に加えて
①波高、周期
②うねりの方向、周期
③雲量、雲底
④雲形(低層雲、中層雲、高層雲)
⑤視程
⑥現在天気、過去天気
が あります。
計測の方法は通信部の方が優しく教えてくださり、慣れれば一人でできます。
観測したデータは、日本時間の0時、3時、9時、12時、15時、18時、21時にインマルサット衛星経由で気象庁宛に送信します。
実際には、通信士が無線室に不在の時間(深夜等)があるため、全ての時間で送信する訳ではありませんが記録用紙にまとめます。
上手くいけば気象庁の地上天気図に観測した情報が採用され、天気予報に活用されます。
気象図に採用されなくても、気象庁のビッグデータに登録され、スーパーコンピュータが計算する際の参考になったりします。
普段 みている天気図も、海の上で船員が計測したデータを参考に作られているんですね。見えないところで頑張っています。
そう考えると、とてもスケールが大きい作業といえるでしょう。
ちなみに私が送信したデータは なんと!!
…採用されませんでした。
まあ、まだ沖縄沖だし…ね。(´・ω・`)
陸から離れてからが本番です。
1月10日『初の時刻改正』@台湾南岸沖
当直舷交代前ラストの4-8直。日本の領海を出たところで、本航海初の時刻改正。
今回の時刻改正では15分時間を巻き戻します。
つまり8-12直以外は休憩時間が15分長くなるということです。15分睡眠時間が増えるのはうれしいですね。
台湾見えない
1月11日『無線室当直』@フィリピン北岸沖
時刻改正2回目フィリピン見えない
20-M.N. 無線室当直
1月12日『太陽観測 学友会』@南シナ海
時刻改正3回目この日は初めての太陽観測を行いました。
連日、曇天が続きできなかった太陽観測。
太陽観測とは、太陽の高度を午前と正午でそれぞれ計測し、推測位置からどれだけズレているかを得る方法です。
要は太陽でランニングフィックスをするということですね。


東京湾仮泊中に撮影した太陽観測のイメージ
どうでもいいけど、六分儀使ってる姿ってカッコいいよね。そう思う人コメントください。(コメント乞食)

覗くと…

こんな感じ
午前観測は、笛の合図に合わせて行います。
順番 | 笛信号 | 意味 |
---|---|---|
1. | ・ー・ー・ー | スタンバイサイト |
2. | ——— | 用意、 |
3. | ・ | てっ |
4. | ——— | 用意、 |
5. | ・ | てっ |
6. | ——— | 用意、 |
7. | ・ | てっ |
8. | ・ー・ー・ | 計測やめ |
コツとしては、マイクロメーターを回しすぎないことです。
士官からは「地球の自転を感じながらゆっくり」と教えられ、半信半疑で試してみると確かに精度が良くなりました。
みなさんも太陽を測るときには「地球の自転を感じながら」を意識しましょう。
正午観測は、太陽が正中(メリパス)したときの高度を測ります。
太陽がもっとも高く見えてるとき、それすなわち太陽が真南の180度方向にあるということです。
推測位置にいた時に太陽がメリパスする高度と、実際にメリパスした高度の差を取れば、それがそのまま推測位置からの南北偏位となります。
よく考えられていますね。
ちなみに、メリパスの際は笛の合図がありません。
各自、「今がメリパスだ!」と思えばその値を取って帰ります。
よって、集中してずっと六分儀を覗いていると いつの間にかみんな片付けている…なんてことも。
裏技としては士官の近くで計測すると、メリパスが確実に終わったあとに帰ることができます。(せこい)
午後からはワッチ班に戻ります。
N.N.-16直です。
しかし、今日は学友会活動の日です。
学友会とは 船内の同好会みたいなもので、学生、士官、部員 問わず活動します。
今回の遠洋航海では、総務班、節水班、理髪班、記録班、映画班、気象考察班、トレーニング班、漁労班などが編成され、私は無線班でした。
私が考案して立ち上げた学友会班ですが、内容はラジオを受信して遊ぼうというもので、短波や付近の国のFMラジオを聴きました。
入ってくる通信のほとんどが中国語で、正直なにを言っているかはわかりませんが、なんとなく異国感は味わえるので楽しいです。
一応、日本語放送も入りNHKラジオを聞いたり、朝鮮中央放送の日本語放送(←!?)を聞いたりしていました。
活動内容がとてもマニアックなので、自分含め学生メンバーは4人でしたが、なかなか楽しかったです
1月13日『船内成人式』@南シナ海
M.N.-4直N.N.-16直
船内成人式
船内成人式とは?
その名の通り、船内で行われる成人式です。
とはいっても、高専4年(=大学1年生)と言えば順当に進級していれば18歳か19歳です。
ここで祝われていたのは、なんらかの理由で1年原級留置になった実習生か、部員(主に司厨部)の方が含まれていました。
地元の同級生に会えない点では、船上成人式は寂しい面はありますが、船の上で成人を迎えるというのも貴重な経験であるので少し羨ましくあります。
ちなみに昨日のN.N.-16直同様に、この日のワッチはなくなりました。
ちょっと悲しい。
1月14日『機帆走実施』@南シナ海
M.N.-4直午後からは課業班。
船体整備では、汚水処理機の汚泥さらいをしました。
字面だけ見るとえげつない作業をしてそうですが、基本的には外からバルブの操作をするのみです。
浄化槽に水を十分入れ、エアを入れて撹拌、水を引く
上部の蓋を開けて、塩素のタブレットを入れるなどもしました。
匂いはそこまでキツくありませんが、やっぱりします。
あと蒸し暑いです。
この作業をしている裏で、機帆走実施の準備がされていました。
機帆走とは?
主機関を使用しながら帆走することです。
今回は、メインマストのアッパートップとロワートップを展張しました。

機帆走中の日本丸
帆を展張するには、ヤードに登って帆を留めている紐を解く必要がありますが、この作業は甲板部の乗組員方が実施します。
先の回でも書いたように、商船高専の実習生は今現在 登檣訓練を行っていませんが、乗組員方は訓練をしないといけません。
この機帆走は乗組員方の訓練の一環でもあるのです。
実習生が行う作業もありますが、ヤードの昇降くらいです。
感覚としては、普段のブレース引きと救命艇の揚収を足したような感じです。
1月15日『海水風呂(終)』@南シナ海
船体整備無線室当直
さて、シンガポール入港が見えてきたところで、悲しい出来事がありました。
浴槽の故障です。
本船のお風呂は、タイル張りの浴槽に張った海水に、ボイラーの蒸気を通すことで沸かしています。
浴室に誰もいない場合は、最後の人が蒸気を止める運用になっていましたが、止め方が分からなかった実習生がそのままにして夕食に行ってしまいました。
結果、浴槽のお湯が煮えたぎり、熱に耐えきれなかったタイルが割れる事態に…
割れたタイル(ガラス)は危険なので、以降入浴は禁止。日本に帰るまでシャワー生活になりました。
まあ、仕方ない…こういうこともある。
強く生きよう。
1月16日
『日本丸本気の210回転。OG13K'T』
@南シナ海→マレーシア東岸沖
船舶医療操練
船舶医療では、同乗しているドクターから講義を受けました。
内容は、食中毒や感染症についてでした。
要は上陸中に怪しいもの食うなよという話です。
他にも「医者(外科医)とはどういう仕事なのか」とか、「なぜ医者になったのか」という話も聞きました。
このドクターは往路だけで、復路は別のドクターに引き継ぎです。
帰りは飛行機。うらやましい。
この辺りからです。日本丸の機関部が遂に本気を出し始めました。
2日間の機帆走のおかげで予定より早く進むことができ、船長が1日早くシンガポールに錨泊することを決断しました。
日本丸は普段7〜8K'T程とゆっくり走っていました。が、遂に主軸回転数を210回転とし、OG12K'T。
2ケタ台になるだけでも歓喜だったのに、12K'Tとは船内学生は狂気乱舞でした。
ちなみに、年末の総員上陸中にUWC(Under Water Cleaning)という、船底清掃をしたおかげで去年の航海に比べてログ(スピード)は伸びていました。ダブルでうれしい。
1月17日『錨地に1日早く到着』@マレーシア東岸沖→シンガポール沖
シンガポール沖に到着しました。
目の前にはマリーナベイ・サンズ。
テレビやガイドブックで見ていた光景が実際に目の前にあると、とうとう来た感があって嬉しいです。が、入港は明後日なのでそれまでお預け。
沖に着くと、代理店の方が通船で乗船されました。
オフィサーもメールでやりとりしてただけで、実際にどんな人が来るか分からずドキドキしてました。
(メール友達にエンカウントする気持ちらしい)
外地でみる初の外国人…いや、ここでは自分達が外国人か?と思いながら、「Hello!!」と大きな声で挨拶します。
1月18日『船体整備 SGアライバルカードの記入』@シンガポール沖仮泊
昨日に引き続き、シンガポール仮泊。大きい船が密集して錨泊しており圧を感じます。
ところで、1日仮泊が早まって予定が空いた訳ですが、こういうとき帆船ではなにをするかというと…
そうだね。やし摺りだね。
やしの実を持ってひたすら甲板流し。
気温が高いお陰で海水が気持ちよくて良いのですが、体勢的に腰がやられます。
でもそんなこと気にしてる暇はありません。
わっしょい\ワッショイ/わっしょい\ワッショイ/…
その後は、「SGアライバルカード」を入力します。
「SGアライバルカード」とは、シンガポール入国24時間以内に記入するフォームで、オンライン申請が可能です。
「え?オンライン?通信環境どうすんの」と思ったあなた。
ちゃんと本船でポケットwi-fiが用意されてました。
しかし、接続台数が10台までで、2台のポケットwi-fiを駆使して順番にやっても、同接10人は重たかったです。
事前にsimを買ってる人や、キャリアで海外通信を申し込んでいる人は、そっちを使ったほうが早いです。
この船内wi-fiは、SGアライバルカードを使い終わった後は教室に置かれ、残りの容量を実習生に開放してもらいました。ありがたき幸せ。
1月19日『シンガポール入港』@シンガポール沖→港内
遂にシンガポール入港。仮泊場所から岸壁まですぐだと思っていましたが、セントーサ島を回ってCruise Terminalへ向かい、1時間弱掛かりました。
岸壁に付けば、入国審査です。
上陸の度に手荷物検査や認証が必要ですが、1回目に顔写真を登録しておけば、入国審査官と話すことなく改札を通るだけで出入国できるようになります。(手荷物検査は必要)
方法は、機械にパスポートを差し込み、機械のカメラで顔を撮影します。
このとき、帽子やメガネは外して置く必要があります。
私は帽子を外し忘れてて係の人に注意されましたorz
昼飯を食べて、午後からは上陸です。
上陸時の様子は…次回!!
釣り太郎日誌(その3)
さて、今回の釣り太郎日記は本人が書いてくれました。
遠洋航海 大物を狙う人は必見です。(たぶん)
ーーーーー
1月4日
仕掛け(バケ)の確認。なお、これが最後の姿となった。
1月8日
昼の整列時、乗組員のSさんからキハダマグロ(80cm)を釣ったと自慢される。
釣れた海域は室戸岬沖
1月9日
20時ごろ、Sさんがマグロの解体ショーを行う。
胃袋には10cmほどのアジが1匹入っていた。
Sさんが事務員さんに話を聞いていたため事務員さんのほうがトローリングに詳しそうだった
1月11日
Sさんが1moverのシイラをあげた。
場所はバシーを抜けたあたりの海域。
また、この日別の学校の人から仕掛けがなくなったといわれた。話を聞くと数日前に夜まで仕掛けており翌日の朝に見に行ったところなくなっていたそうだ。これ以降いくら探しても見つからなかった。
仕掛けは日没までに、また通行制限されたときに都度回収しよう。
1月12日
この日学友会があり、仕掛けを自作した。
仕掛けは針とスナップを作るときの紐を使い作った(プロトタイプver.1.0)。この時担当教官と一緒に作った
1月13日
初めて仕掛けを流した。しかし釣れなかったばかりか紐が絡み原型をとどめていなかった。またオフィサーからトローリングの話を聞き、トローリングの最適な速力は帆走するぐらいで、水深の変化がある所や近くに陸地があるところのほうが釣れやすいらしい
1月14日
この日ぐらいから風が弱まり通行制限が解除された。部員方は釣れていたがこっちは釣れなかった
1月15日
この日甲板上で散歩していた機関部の方から声を掛けられた。
この方も釣りの経験があるらしくビニールひもやお菓子の袋で作ること勧められた。
また、ハワイは釣れるが、オーストラリアのダウ島に行ったときはカツオがかかったのみであまり釣れなかったと教えていただいた。
この日の夕方鳥羽のW君に手伝ってもらい仕掛け(プロトタイプver.2.0)を作った。
この時ビニールひもがなかったのでビニール袋で代用した。また集魚効果のあるヒコーキも付けた
1月16日
ヒコーキを付けたことにより仕掛けが絡むは、Sさんから魚を散らすと小言いわれるはでこの日のうちに外した
1月18日
前日シンガポールに錨泊した。
船の近くに遊漁船がいたため声をかけたかったと後悔した。
ーーーーー
残念ながら、学生部は往路で釣果をあげることができなかったようです。
復路に期待ですね。
最新の記事です。
コメント欄
1. まし
2025年6月24日 11:40
記憶が鮮明によみがえってきました!!素晴らしい???
これからも頑張って書いてね
これからも頑張って書いてね
2. つり太郎
2025年6月24日 12:39
https://verymicrosoft.com/blog
乗船実習の要点がユーモアとともに書いてあって面白さ半分懐かしさ半分を感じました。
続きの遠洋航海上陸編、復路を楽しみに待ってます!
続きの遠洋航海上陸編、復路を楽しみに待ってます!
3. うるし
2025年6月24日 13:48
いやぁ、懐かしいねぇ
海水風呂もなかなか気持ちよくてよかったよね(滑りやすいし2回くらい転んだけど)
海水風呂もなかなか気持ちよくてよかったよね(滑りやすいし2回くらい転んだけど)
4. 管理人
2025年6月24日 16:42
大変申し訳ありません。
次の記事作成中にミスって上書きしてしまいました。
復旧中です。
次の記事作成中にミスって上書きしてしまいました。
復旧中です。
5. 管理人
2025年6月24日 18:44
復旧しました。ご迷惑おかけしました。
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